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司法書士業務、法律改正やエントラストからの
お知らせ等様々な情報を発信していきます。

司法書士のお仕事~会社のお客様編③~

 前回に引き続き、会社のお客様に対する司法書士のお仕事内容を紹介していきます。

2 売掛金の回収
 無事に、合同会社熊本エントラストを設立した縁さんは、売上げを順調に上げていきました。
 一方、常連のお客様であるAさんがツケで飲食するようになり、常連であるため、縁さんはAさんに強く請求できないでいました。そうしていたところ、ついに、ツケの合計金額が20万円となってしまいました。
 縁さんは、Aさんから20万円を分割で支払ってもらうように念書を書いてもらいましたが、約束どおりの支払はありませんでした。
 いくら常連のお客様とはいえ、ツケを全く支払わない態度に業を煮やした縁さんは司法書士に相談をすることにしました。

 司法書士に相談したところ、請求する金額が140万円以下であれば司法書士に代理人を依頼することができること(簡裁訴訟代理)、Aさんに飲食代金20万円を請求する手続きとして以下の裁判手続きがあること、の説明を受けました。

①調停
 当事者間での話し合いによる解決が望ましい場合(例:親族間や近隣住民同士の紛争)や、証拠が不十分で訴訟で争っても勝訴することが難しい場合に適しています。この手続きは、非公開で行われます。しかし、相手方が調停に応じない場合はそのまま調停不成立で手続きが終了してしまい、時間と費用が無駄になってしまいます。
 また、熊本県司法書士会でも、司法書士が調停人役となり、お互いの話を十分に聴きながら、円満な解決を目指す「話し合いセンターくまもと」を設置しています(ただし、紛争金額が140万円以下に限ります)。

②支払督促
 金銭その他の代替物等の給付を目的とする債務の履行が任意に履行されないが、相手が請求そのものについて争うおそれがほとんどない場合に適しています。申立時に証拠が不要で、申立手数料(収入印紙)が訴訟の半額で済みます。また、異議を出されて通常訴訟に移行しない限り、裁判所に出頭する必要がありません。
 債務者(お金を支払う等の義務のある人)から2週間以内に異議の申立てがなければ、裁判所は、債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付さなければならず、債権者は簡易・迅速に債務名義(債務者の財産を差し押さえるために必要な書類)を取得できます。
 しかし、相手方が異議を出すと通常訴訟に移行してしまいます。また、相手方の住所地の簡易裁判所にしか申立てができません。

③少額訴訟
 訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用ができ、原則、1日で審理をします。しかし、被告(訴えられた人)からの求めがあると通常訴訟に移行します。

④通常訴訟 話し合いによる解決ができない場合や権利関係を明確にしておきたい場合に適しています。労力と時間を最も必要とします。また、手続きに関しては、公開されます。

⑤訴え提起前の和解
 民事上の争いについて当事者間で合意が成立した場合は、簡易裁判所に和解の申立てをして、簡易に債務名義を取得することができます。金銭その他の代替物を対象としている場合は、公証人役場で作成する「強制執行認諾文言付公正証書」を利用する方法も考えられます。
 これらの手続は合意は成立したものの、合意案の履行に不安があるときに有効です。

 縁さんは、上記の手続きのうち「支払督促」を選択し、司法書士に裁判所書類作成を依頼しました。熊本簡易裁判所に支払督促を申し立ててすぐ、Aさんから慌てた様子で電話があり、冬のボーナスで一括で支払うから申立を取下げて欲しいと懇願されました。縁さんは、Aさんからの20万円の入金があったことを確認して、支払督促を取り下げました。

※今回は、支払督促を利用することでうまく解決できましたが、事例によって有効な手続きは異なります。
 まずは、ツケを認めない、ツケを認めても上限を設けるなど紛争を予防することが大事です。

司法書士・AFP(ファイナンシャルプランナー) 廣濱 翔

前回に引き続き、会社のお客様に対する司法書士のお仕事内容を紹介していきます。2売掛金の回収無事に、合同会社熊本エントラストを設立した縁さんは、売上げを順調に上げていきました。一方、常連のお客様であるAさんがツケで飲食するようになり、常連であ

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司法書士のお仕事~会社のお客様編②~

前回に引き続き、会社のお客様に対する司法書士のお仕事内容を紹介いたします。
(前回記事 司法書士のお仕事~会社のお客様編①~ )


1 会社設立の登記手続きのサポートの続き

 3年後、熊本市での飲食店の経営の軌道に乗った縁さんは、改めて司法書士に相談をし、会社設立手続きを依頼することにしました。
 縁さんは、会社といっても、株式会社や持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)があることを知りました。また、有限会社を新規に設立することができず、従前の有限会社は現在、株式会社として存続していることを知りました。

 合資会社や合名会社は無限責任社員(会社が倒産した場合に会社の資産では借金を支払いきれない場合に個人の財産も返済に充てなければならない)を置く必要があるため、主に株式会社と合同会社の特徴と長所・短所を司法書士から教えてもらいました。

【株式会社と合同会社の比較】

株 式 会 社

合 同 会 社

特   徴

・必ずしも出資者が経営に携わる必要はない(所有と経営の分離)

・株主は有限責任

・出資者を広く募ることができる

・自ら経営に参加する

・有限責任社員

メリット

・知名度が高い

→人材が集まりやすい

・株式や社債による資金調達

・原則として、出資持分の譲渡は自由(但し、譲渡には会社の承認を要する旨を規定している株式会社がほとんど)

・登記上の代表者名称が「代表取締役」

・株式会社に比べ設立費用が安い(実費約6万5千円程度)

・株式会社に比べ定款の自由度が高い

・決算公告義務がない

・法人が役員になることができる

・改選のない限り役員変更登記は不要

・出資持分に関わらず定款で自由に利益の配分を定めることができる

デメリット

・公証人役場での定款認証が必要であるため、相対的に設立費用が高い(実費約21万円程度)

・決算公告義務がある

・役員の任期の定めがあり、従前の役員が再任した場合でも登記手続きが必要(登記コスト)

・12年以上登記をしなかった場合、解散したものとみなされる(みなし解散)

・知名度が低い

・出資持分の譲渡は原則として、他の社員全員の承諾が必要(定款で別段の定めを置くことができる)

・登記上の代表者名称が「代表社員」であるため、一般の方に馴染みがない


  縁さんは、上記の違いを検討した結果、会社設立費用が安くて済む合同会社を設立にすることにしました。司法書士に依頼して1週間程度で『合同会社熊本エントラスト』(※架空の会社です)の設立登記が完了しました。
 その後、縁さんは会社名義の銀行口座を開設したり、取引先へ法人成りの挨拶状を送ったりしました。その他、会社を設立すると官公署への届出が必要になるため、各手続きを司法書士から紹介してもらった専門家に依頼しました。以下は主な手続きを挙げています。
・税理士に法人設立届出等
・行政書士に会社名義での飲食店の営業許可
・社会保険労務士に健康保険・厚生年金保険新規適用届等

 今回、縁さんは合同会社を設立しましたが、第三者からの出資を受けたい場合等株式会社にする必要がある場合は、合同会社から株式会社への組織変更手続きを行うことができます。
 会社を設立する際は、会社の種類を比較検討して選択する必要があります。また、設立後に様々な官公庁の手続きが必要となりますので、漏れなく行うよう注意が必要です。

司法書士・ファイナンシャルプランナー(AFP)  廣濱 翔

前回に引き続き、会社のお客様に対する司法書士のお仕事内容を紹介いたします。(前回記事司法書士のお仕事~会社のお客様編①~)1会社設立の登記手続きのサポートの続き3年後、熊本市での飲食店の経営の軌道に乗った縁さんは、改めて司法書士に相談をし、

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司法書士のお仕事~会社のお客様編①~

 以前、個人のお客様からよくご依頼いただく事例を基に司法書士の業務紹介をしました。
過去の記事は、コチラ↓
 司法書士のお仕事~個人のお客様編①~
 司法書士のお仕事~個人のお客様編②~
 司法書士のお仕事~個人のお客様編③~

※司法書士の概括的な内容は、 司法書士法人エントラストの業務内容 に記載しています。

 今回からは数回に分けて、縁さん(仮名)の事業に沿って、司法書士がどんなお仕事をしているかをご紹介します(^-^ )

1 会社設立の登記手続きのサポート
 縁さんは、以前、勤めていた飲食店から独立開業し、熊本市内に自分でお店を持つことにしました。経営の形態として、個人事業か、会社かで行うことになりますが、どちらで事業を行うべきか迷ったため、司法書士事務所に相談に行くことにしました。

 縁さんは、司法書士事務所において、個人事業と会社の大まかな違いについて説明を受けました。

【個人事業と会社の違い】

 

 

個人事業

会      社

 




・開業時に資本金が不要

・許認可事業を除き、すぐに事業を開始できる

・登記費用等が不要

・記帳及び税務申告が比較的簡単

・交際費を全額経費処理できる

・設立時に資本金が必要

・設立時に時間と登記費用が必要

・社会保険や登記費用等のコストがかかる

・記帳及び税務申告が複雑

・交際費の一定額までしか全額経費処理できない

・赤字でも法人住民税の均等割額の負担がある









・借金は個人の全財産で返済する(無限責任)

 

・社会的信用が劣る(小規模なイメージ)

→資金調達が比較的困難。人材が集まりにくい

・事業主が社会保険に加入できない

→国民健康保険、国民年金に加入

・事業主への給与・退職金を経費処理できない

・税率は所得が増えれば税率が高くなる(累進課税)

・決算日が12月31日に限定

・一部の会社形態を除き、借金は会社の財産で返済し出資の範囲内でのみ責任を負う(有限責任)

※ただし、個人として保証人になっている場合は注意

・登記簿により会社の資本金や役員等が公示されるため、社会的信用が大きい

→資金調達が比較的容易

 

・社会保険に原則加入であるため、人材が集まりやすい

・役員報酬・退職金を経費処理できるため、節税効果が高い

・税率は定率

・自由に決算日を選択できる




 縁さんは、上記の違いを聞いて、まず、個人事業で飲食店を始め、軌道に乗ったら、節税のため会社にすることにしました(法人成り)。
 そして、飲食店の営業を始めるには、保健所の営業許可が必要なことを知り、営業許可については、行政書士に依頼することにしました。
 3年後、飲食店の経営の軌道に乗った縁さんは、改めて司法書士に相談をし、会社設立手続きを依頼することにしました。

 次回に続く・・・

※介護事業を行うための許認可を得るためには、株式会社や合同会社等の法人である必要がありますので、介護事業をされたい方は起業時に会社設立の登記手続きが必要となります。

※司法書士法人エントラストでは、会社設立や個人事業から会社への法人成りの、ご相談をされたお客様には無料で『司法書士による起業支援ハンドブック』を差し上げています。このハンドブックは、新たに事業を開始しようとする方にとって必要な知識について司法書士の視点からまとめたものです。独立開業・起業時の参考になれば幸いです。


司法書士/ファイナンシャルプランナー(AFP)  廣濱 翔

以前、個人のお客様からよくご依頼いただく事例を基に司法書士の業務紹介をしました。過去の記事は、コチラ↓司法書士のお仕事~個人のお客様編①~司法書士のお仕事~個人のお客様編②~司法書士のお仕事~個人のお客様編③~※司法書士の概括的な内容は、司

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印鑑の種類

 司法書士の仕事をしていると様々な場面でお客様から書類に印鑑をもらいます。今回は、印鑑の種類について取り上げます。

 

実印
 個人であれば住民登録をしている市区町村の役所、会社であれば法務局に印鑑登録の申請をして受理された印鑑のことをいいます。実印は本人確認をした上で印鑑登録をしているため、とても重要な印鑑になります。したがって、契約書等重要書類に用います
 印鑑証明書を同時に求めることによって、実印であるかどうか確認します。

 司法書士のお仕事でも、例えば、以下の場合に実印による押印をお願いしております。

・不動産売却の際に売主様から司法書士への所有権移転登記を委任する委任状
・不動産を含む遺産分割協議において共同相続人が署名・捺印する遺産分割協議書
・会社や法人の登記を変更するお客様から司法書士への変更登記を委任する委任状 等

 

認印
 印鑑登録をしていない印鑑のことをいいます。印鑑証明までは求められない請求書や領収書等に用います。司法書士のお仕事では、司法書士との業務委託契約書や、印鑑証明書が不要の場合の不動産登記における登記委任状等に押印してもらっています。

 

銀行印
 銀行口座を開設する際に金融機関に届け出印として登録した印鑑のことをいいます。金銭の出納のために用います。

 

シャチハタ
 本体内部にインクが入っているハンコをインク浸透印(シャチハタ)といいます。シャチハタは文字がゴムに彫られているため印影が変形する可能性があること、インクを用いてるため時が経つと印影が消えてしまう可能性があることから、契約書や申請書への捺印で利用できません。

 

 普段何気なく押している印鑑も用途に応じて、求められる印鑑の種類が違います。特に『実印』は、本人の意志により押印した印鑑としての証明力が高いものとなりますので、偽造されにくい印鑑を登録し、その印鑑は十分に管理をする必要があります。実印は、官公庁の手続き等で求められることが多いので、何か手続き等が必要になるまでは、そもそも印鑑登録をしないというのもありだと思います。

司法書士/AFP  廣濱 翔

 

司法書士の仕事をしていると様々な場面でお客様から書類に印鑑をもらいます。今回は、印鑑の種類について取り上げます。実印個人であれば住民登録をしている市区町村の役所、会社であれば法務局に印鑑登録の申請をして受理された印鑑のことをいいます。実印は

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司法書士のお仕事~個人のお客様編③~

 「司法書士って何してるの?」っていうご質問に対する回答の続きです。今回も、縁さん(仮名)の人生に沿って、司法書士がどんなお仕事をしているかご紹介していきます(^。^ )
 ※前回の記事は司法書士のお仕事~個人のお客様編①~
            司法書士のお仕事~個人のお客様編②~ です。

5 成年後見手続き
 縁さんは、最近、物忘れをするようになり、将来の生活が不安になってきました。認知症により判断能力が衰えた場合に、預貯金の管理や介護施設への入所契約等はどうすればいいのでしょうか?

 判断能力が衰えると適正な財産の管理や契約ができなくなります。その場合は、判断能力が衰えた方に代わって財産の管理や契約を行う法律の制度として、(1)法定後見制度と、(2)任意後見制度があります。

 (1)法定後見制度は、判断能力の程度に応じて、成年後見人、保佐人、補助人という本人を保護する方を家庭裁判所に選任してもらいます。本人を保護する候補者を申立書に記載できますが、誰を選任するかは裁判所が最終的に決めます。

 (2)任意後見制度は、お元気なうちに、将来、判断能力が衰えた場合に備えて、あらかじめ自分で後見人を選ぶ制度です。任意後見人になってもらう方と、公証人が作成する公正証書で任意後見契約を締結する必要があります。
 判断能力が衰えた場合は、任意後見人を監督する任意後見監督人を家庭裁判所に選任してもらい、任意後見監督人の監督の下、任意後見人は契約で定めた内容に基づき、本人に代わって、財産管理等を行います。

 縁さんは、まだお元気であったので、今までの信頼関係から司法書士と任意後見契約を締結しました。財産管理や契約を専門家にしてもらえるため、縁さんは安心して老後を過ごすことができます。

6 不動産の相続登記手続き
 ある日、縁さんのお子さんが司法書士事務所を尋ねてきました。そこで、司法書士は縁さんが亡くなったことを知らされました。縁さんが所有していた自宅不動産の名義変更はどうすればいいのでしょうか?
 
 縁さんが遺言書を書いていれば、その遺言書に基づいて、遺産の分配を行います。遺言書がなければ、相続人間で遺産分割について協議をしてもらいます。
 縁さんは、生前、お子さんに自宅不動産を相続させるという公正証書遺言を作成していましたので、司法書士が代理して縁さんからお子さんへの自宅不動産の名義変更を行いました。

  今回で「司法書士のお仕事~個人のお客様編~」は、最終回になります。ご覧いただいたとおり、司法書士はお客様の一生に寄り添って法的手続きをサポートできます。少しでも司法書士のお仕事のイメージができれば嬉しいです。

司法書士 廣濱 翔

「司法書士って何してるの?」っていうご質問に対する回答の続きです。今回も、縁さん(仮名)の人生に沿って、司法書士がどんなお仕事をしているかご紹介していきます(^。^)※前回の記事は司法書士のお仕事~個人のお客様編①~司法書士のお仕事~個人の

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