司法書士のお仕事~会社のお客様編②~
前回に引き続き、会社のお客様に対する司法書士のお仕事内容を紹介いたします。
(前回記事 司法書士のお仕事~会社のお客様編①~ )
3年後、熊本市での飲食店の経営の軌道に乗った縁さんは、改めて司法書士に相談をし、会社設立手続きを依頼することにしました。
縁さんは、会社といっても、株式会社や持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)があることを知りました。また、有限会社を新規に設立することができず、従前の有限会社は現在、株式会社として存続していることを知りました。
合資会社や合名会社は無限責任社員(会社が倒産した場合に会社の資産では借金を支払いきれない場合に個人の財産も返済に充てなければならない)を置く必要があるため、主に株式会社と合同会社の特徴と長所・短所を司法書士から教えてもらいました。
【株式会社と合同会社の比較】
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株 式 会 社 |
合 同 会 社 |
特 徴 |
・必ずしも出資者が経営に携わる必要はない(所有と経営の分離)
・株主は有限責任
・出資者を広く募ることができる |
・自ら経営に参加する
・有限責任社員 |
メリット |
・知名度が高い →人材が集まりやすい
・株式や社債による資金調達
・原則として、出資持分の譲渡は自由(但し、譲渡には会社の承認を要する旨を規定している株式会社がほとんど)
・登記上の代表者名称が「代表取締役」 |
・株式会社に比べ設立費用が安い(実費約6万5千円程度)
・株式会社に比べ定款の自由度が高い
・決算公告義務がない
・法人が役員になることができる
・改選のない限り役員変更登記は不要
・出資持分に関わらず定款で自由に利益の配分を定めることができる |
デメリット |
・公証人役場での定款認証が必要であるため、相対的に設立費用が高い(実費約21万円程度)
・決算公告義務がある
・役員の任期の定めがあり、従前の役員が再任した場合でも登記手続きが必要(登記コスト)
・12年以上登記をしなかった場合、解散したものとみなされる(みなし解散) |
・知名度が低い
・出資持分の譲渡は原則として、他の社員全員の承諾が必要(定款で別段の定めを置くことができる)
・登記上の代表者名称が「代表社員」であるため、一般の方に馴染みがない
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縁さんは、上記の違いを検討した結果、会社設立費用が安くて済む合同会社を設立にすることにしました。司法書士に依頼して1週間程度で『合同会社熊本エントラスト』(※架空の会社です)の設立登記が完了しました。
その後、縁さんは会社名義の銀行口座を開設したり、取引先へ法人成りの挨拶状を送ったりしました。その他、会社を設立すると官公署への届出が必要になるため、各手続きを司法書士から紹介してもらった専門家に依頼しました。以下は主な手続きを挙げています。
・税理士に法人設立届出等
・行政書士に会社名義での飲食店の営業許可
・社会保険労務士に健康保険・厚生年金保険新規適用届等
今回、縁さんは合同会社を設立しましたが、第三者からの出資を受けたい場合等株式会社にする必要がある場合は、合同会社から株式会社への組織変更手続きを行うことができます。
会社を設立する際は、会社の種類を比較検討して選択する必要があります。また、設立後に様々な官公庁の手続きが必要となりますので、漏れなく行うよう注意が必要です。
司法書士・ファイナンシャルプランナー(AFP) 廣濱 翔
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